OpenAIのWhisper APIは音声1分あたり$0.006、1時間で$0.36です。この価格は2023年3月のAPI公開以来変わっておらず、多くの文字起こしの予算がこの数字を前提に組まれてきました。
2026年に2つのことが変わりました。OpenAIはより安く高精度な文字起こしモデルを出し、8月26日にはwhisper-1をGPT-4o系の文字起こしモデルすべてとともに非推奨にしました。これらは2027年2月26日にAPIから削除されます。つまり考えるべきは「Whisperはいくらか」だけではなく、「2月以降、この音声をどのモデルで、いくらで処理するか」です。
以下では、2026年10月11日にOpenAIの料金ページで確認した現在の文字起こし料金に続いて、提供終了で何が使えなくなるか、実際のワークロードでいくらかかるか、代替手段を説明します。私たちは音声認識を提供するCartesiaを開発しているので、利害関係があります。OpenAIの数字はすべてOpenAI自身のもので、当社の料金は最後に載せているので両方を確認できます。
OpenAIの文字起こし料金
| モデル | 用途 | 1分あたり | 1時間あたり | ステータス |
|---|---|---|---|---|
gpt-transcribe | 録音済みファイル | $0.0045 | $0.27 | 現在のデフォルト |
gpt-4o-mini-transcribe | 録音済みファイル | 約$0.003 | 約$0.18 | 2027年2月26日に削除 |
gpt-4o-transcribe | 録音済みファイル | 約$0.006 | 約$0.36 | 2027年2月26日に削除 |
gpt-4o-transcribe-diarize | 話者ラベル付きファイル | 約$0.006 | 約$0.36 | 2027年2月26日に削除 |
whisper-1 | ファイル、タイムスタンプ、字幕 | $0.006 | $0.36 | 2027年2月26日に削除 |
gpt-live-transcribe | ライブ音声 | $0.017 | $1.02 | ライブのデフォルト |
gpt-realtime-whisper | ライブ音声 | $0.017 | $1.02 | 提供中 |
gpt-realtime-translate | ライブ翻訳 | $0.034 | $2.04 | 提供中 |
「約」の行はOpenAI自身の推定値です。この3モデルはトークン課金(gpt-4o-transcribeは音声入力100万トークンあたり$2.50、出力100万トークンあたり$10、miniはその半額)なので、実際の1分あたりの費用は話す量で変わります。whisper-1とgpt-transcribe系は音声の長さで課金されるので、予算を立てやすくなります。
表に出ていない点がいくつかあります。
- ファイルは25 MBまで。 ファイル文字起こしガイドはmp3、mp4、mpeg、mpga、m4a、wav、webmを25 MBまで受け付けます。1時間分のWAVは事前に分割か圧縮が必要で、分割した継ぎ目で単語の誤りが入り込みます。
- ライブはファイルの約4倍。 ストリーミング文字起こしは1分$0.017、同じ1分を後からアップロードすれば$0.0045です。話している最中に文字が要らないなら、その分を払う必要はありません。
- リージョン指定は割増。 2026年3月5日以降にリリースされた対象モデルでは、データレジデンシー用エンドポイントに10%の割増がかかります。
- 新しいモデルに無料枠はありません。
gpt-transcribeと2つのライブモデルのページでは、無料ティアは非対応となっています。最初の1分から課金されます。
2027年2月の提供終了
非推奨の告知は短いものです。4つのモデルが削除され、2つが後継になります。
| 2027年2月26日に削除 | OpenAIが指定する後継 |
|---|---|
whisper-1 | gpt-transcribeまたはgpt-live-transcribe |
gpt-4o-transcribe | gpt-transcribeまたはgpt-live-transcribe |
gpt-4o-mini-transcribe | gpt-transcribeまたはgpt-live-transcribe |
gpt-4o-transcribe-diarize | gpt-transcribeまたはgpt-live-transcribe |
単純な文字起こしなら、移行はほぼモデル名の変更と値下げだけです。gpt-transcribeは単一のlanguageの代わりにlanguages配列を受け取り、製品名やIDのためのkeywordsが加わり、ファイル処理中にテキストをストリーミングできます。
問題は、Whisperが担っていたのにまだ後継がない仕事です。OpenAI自身の文字起こしガイドは、そのうち3つをいまも削除予定のモデルに案内しています。
- 単語単位のタイムスタンプと
srt・vtt字幕はwhisper-1へ。 - 英語への翻訳は翻訳エンドポイント経由で
whisper-1へ。 - 話者ラベルは
gpt-4o-transcribe-diarizeへ。
2026年10月11日時点で、OpenAIはどれにも後継を示していません。字幕の生成、動画への文字起こしの同期、通話の話者分離を行っている製品なら、後継は告知に含まれていません。移行のうち、2月ではなく今から着手すべきなのはこの部分です。
実際のワークロードでの費用
定価ベース、データレジデンシーの割増は含みません。
録音済み通話を月10,000時間文字起こしする場合(600,000分)。whisper-1では$3,600です。gpt-transcribeに移すと$2,700になります。gpt-4o-mini-transcribeなら約$1,800ですが、これも2月に削除されるので、その節約は長くても数か月です。
月10,000分の通話を聞く音声エージェントの場合。 gpt-live-transcribeでのリアルタイム文字起こしは$170です。バッチの請求額と比べると小さく見えますし、実際小さいです。エージェントにとって文字起こしが高くつく項目になることはまれです。効いてくるのは、聞き間違えた口座番号がその後の通話に与える影響のほうです。
Whisperの精度はまだ十分か
Whisperは2022年に基準を作りましたが、いまは上位にはいません。Artificial Analysisが2026年10月に録音済み音声で計測した単語誤り率は次のとおりです(低いほど良い)。
| モデル | 単語誤り率 | 1,000分あたりの料金 |
|---|---|---|
| ElevenLabs Scribe v2 | 2.2% | $3.67 |
| OpenAI GPT Transcribe | 3.3% | $4.50 |
| OpenAI GPT-4o Transcribe | 4.0% | $6.00 |
| Whisper large-v2 (OpenAI) | 4.1% | $6.00 |
| Whisper large-v3 Turbo, Groq | 4.6% | $0.67 |
| Deepgram Nova-3 | 5.2% | $4.30 |
この表の読み方は2つあります。OpenAIの中では、gpt-transcribeはwhisper-1より安くて精度も高いので、単純な文字起こしなら2月を待つ理由はありません。OpenAIの外では、GroqがホストするWhisper large-v3 Turboはwhisper-1の約9分の1の価格で、誤りは0.5ポイント多い程度です。アーカイブには良い取引ですが、顧客が読むものには向きません。
単語誤り率は診断の指標であって、結論ではありません(専用のガイドも書きました)。移行の前に、手持ちのいちばん難しい録音を2〜3の候補で試してください。
Whisperを自分で動かす
オープンソースのWhisperモデルはMITライセンスで、提供終了の対象外です。音声が録音済みで、GPUに余裕があり、OpenAIがなくす機能(タイムスタンプ、字幕、英語への翻訳)が必要なら、Whisper large-v3をセルフホストすれば3つとも残せます。推論プロバイダーがホストするWhisperは、GPUを持たずに同じモデルを使う方法です。どちらの場合も、分割、無音の扱い、更新は自分で面倒を見ることになります。
ライブの会話にはセルフホストは向きません。Whisperは完了した音声の30秒単位のウィンドウ向けに作られています。ストリーミング用にラップすると、ターン終了の判定や無音でのハルシネーション対策を自前で用意し、ターンごとに往復の遅延も増えます。
Cartesiaの位置づけ
Cartesiaには用途の異なる2つの音声認識モデルがあります。
音声エージェントにはInk-2。 話している最中にストリーミングで文字起こしし、ターンの終わりも自分で検出するので、エージェントに別のVADは要りません。2026年10月のArtificial Analysisのストリーミングベンチマークでは、ターン検出を内蔵したInk-2の単語誤り率は3.4%で、GPT Live Transcribeは3.9%、GPT Realtime Whisperは4.9%です。Scaleプランの単価で1時間あたり約$0.40、OpenAIのライブモデルはどちらも$1.02です。Ink-2が現在対応しているのは英語、フランス語、ヒンディー語、日本語、スペイン語です。それ以外の言語をライブで扱うなら、Deepgram Nova-3のような多言語モデルをOpenAIのモデルと並べて試してください。
録音済みファイルにはink-whisper。 当社の旧世代のWhisper系モデルで、引き続きバッチエンドポイントで提供しています。1回のアップロードでファイル分割は不要、単語単位のタイムスタンプ付き、対応言語は約100です。Cartesiaは英語への翻訳と話者ラベルには対応していないので、提供終了で生じる3つの穴のうち埋められるのは1つです。
Cartesiaの料金体系では、どちらも音声合成と同じクレジットから引かれます。
| モデルとエンドポイント | クレジット | Scaleプランの単価(800万クレジットで$299) |
|---|---|---|
ink-whisper、バッチ | 2秒ごとに1クレジット | 1時間あたり約$0.07 |
ink-whisper、ストリーミング | 1秒あたり1クレジット | 1時間あたり約$0.13 |
| Ink-2、ストリーミング | 1秒あたり3クレジット | 1時間あたり約$0.40 |
プランは月20,000クレジットの無料プランから始められ、バッチ文字起こしなら約11時間分です。無音も音声として課金されます。当社のプランは純粋な従量課金ではなく前払いのサブスクリプションなので、利用量に合うプランは料金ページで確認してください。
録音済み音声を文字起こししていて、2月以降もタイムスタンプが必要なら、いくつかのファイルをink-whisperで試してください。音声エージェントを作っているなら、プレイグラウンドでInk-2を自社の通話で試せます。ドキュメントのOpenAIからの移行ガイドでは、OpenAIの文字起こしとRealtime文字起こしの設定をCartesiaの設定に対応づけています。