オープンソースの音声合成(TTS)は、もう十分に良くなりました。8200万パラメータのモデルが、ブラインド試聴テストでAmazon Pollyの生成音声とほぼ並ぶスコアを出し、しかも無料でダウンロードできます。落とし穴は「オープン」という言葉です。下の表の13モデルのうち3つは、販売するものには使えないウェイトで配布されていて、さらに1つは使わないでほしいと書いています。表にない人気モデルにも同じ問題を抱えるものがいくつもあります。
そこでこのガイドでは、オープンソースのTTSモデルをまずライセンスで、次に品質で整理します。アプリ、デバイス、音声エージェントに何を組み込むかを決める開発者向けです。自分用に作るだけなら、ライセンスの列は無視して、一番良い声のものを選んでください。
結論から
| モデル | 開発元 | ウェイトのライセンス | 商用利用 | 言語 | Artificial Analysisのスコア |
|---|---|---|---|---|---|
| Kokoro 82M | hexgrad | Apache 2.0 | 可 | 8 | 1064 |
| Magpie TTS Multilingual | NVIDIA | NVIDIA Open Model License | 可 | 12 | 1064 |
| Maya1 | Maya Research | Apache 2.0 | 可 | 英語 | 1046 |
| Chatterbox | Resemble AI | MIT | 可(出力に透かし) | 23以上(Multilingual V3) | 1026(英語モデル) |
| Zonos v0.1 | Zyphra | Apache 2.0 | 可 | 5 | 1000 |
| Orpheus 3B | Canopy Labs | Apache 2.0 | 可 | 英語 | 未評価 |
| Dia 1.6B | Nari Labs | Apache 2.0 | 可 | 英語 | 未評価 |
| CosyVoice 2 | Alibaba | Apache 2.0 | 可 | 中国語中心、多言語 | 未評価 |
| Piper | Open Home Foundation | エンジンはGPL-3.0、音声ごとに個別 | 音声ごとに確認 | 40以上の地域バリエーション | 未評価 |
| VibeVoice 1.5B | Microsoft | MIT、研究用途のみ | 非推奨 | 英語、中国語 | 957 |
| XTTS v2 | Coqui(事業終了) | Coqui Public Model License | 不可 | 17 | 916 |
| Fish Audio S2 Pro | Fish Audio | Fish Audio Research License | 不可 | 80以上 | 1116 |
| Breeze TTS 2 | BreezeBlue | 研究・非商用 | 不可 | 英語、中国語 | 1220 |
スコアはArtificial AnalysisのProvider VoiceリーダーボードのEloレーティング(2026年10月)です。聞き手は、どのモデルが作ったかを知らされないまま同じ文の2つの音声を聞き、好きなほうを選びます。ライセンスと言語は、同じ月に確認した各モデルのモデルカードまたはリポジトリによります。「未評価」はそのリーダーボードに載っていないという意味で、品質が低いという意味ではありません。
1つだけ選ぶなら、小さく速い英語ならKokoro、声のクローンと多言語ならChatterbox、オフラインのデバイスならPiperです。
まずウェイトのライセンスを確認する
オープンソースのTTSプロジェクトには、たいていライセンスが2つあります。コードのライセンスと、学習済みウェイトのライセンスです。コードはほぼ必ず寛容なライセンスです。制限はウェイトの側にあり、ウェイトがなければコードは音を出しません。
典型例がXTTS v2です。Coqui TTSライブラリはMPL-2.0で、Idiap Research Instituteがフォークで保守を続けています。一方、XTTS v2のウェイトはCoqui Public Model Licenseで配布されていて、冒頭に「This license allows only non-commercial use of a machine learning model and its outputs.」とあります。ポイントは「出力」も含まれることです。生成した音声にも制限が及びます。Coquiはかつて商用ライセンスを販売していましたが、会社が事業を終了したため、その道も閉じています。
新しいモデルにも同じパターンがあります。F5-TTSはコードがMIT、ウェイトがCC BY-NC 4.0です。Mistralによると、Voxtral TTSは同梱の参照音声からCC BY-NC 4.0を引き継いでいます。Fish AudioのS2 ProはFish Audio Research Licenseで、モデルカードでは非商用利用のみへの同意を求められます。Artificial Analysisで最も評価が高いオープンウェイトモデルのBreeze TTS 2は、ウェイトだけでなく自社サーバーで生成した音声まで、研究と非商用の利用に限っています。
VibeVoiceは特殊なケースです。Microsoftは最も寛容なライセンスのひとつであるMITで公開しましたが、モデルカードは用途を研究に限定し、追加のテストなしに商用や実運用で使うことは推奨しないとしています。大きいほうのVibeVoice-Largeは、ウェイトの公開も停止されました。MITライセンスに「使わないでください」が添えられている状態は、ブログ記事ではなく法務担当に相談すべき問題です。
本番で使えるモデル
Kokoro 82Mは英語の定番です。パラメータは8200万、ライセンスはApache 2.0、スコアは1064で、NVIDIAのMagpieと同点、Amazon Pollyの生成音声とは2ポイント差です。バージョン1.0には8言語で54種類の音声があります。モデルカードによれば、2025年4月の時点で、ホスト型のプロバイダーが100万文字あたり1ドル未満で再販するほど軽量です。声のクローンはできません。
Chatterbox(Resemble AI)は、寛容なライセンスで声のクローンが必要な場合の選択肢です。MITライセンスのファミリーには、英語の500Mモデル、23以上の言語に対応する500MのChatterbox Multilingual V3、低遅延向けの350Mの英語モデルChatterbox-Turboがあり、Turboは[laugh]や[cough]などのタグに対応します。Chatterboxが生成するすべてのファイルにはResembleのPerth透かしが入ります。耳では聞こえませんが検出はできます。出所の証明を重視するなら利点ですし、モデルカードを読んでいなければ驚くところです。
NVIDIA Magpie TTS Multilingualは、ヒンディー語、日本語、韓国語、アラビア語を含む12言語に対応し、パラメータは3億6400万です。NVIDIAのNeMoフレームワーク上で動きます。NVIDIA Open Model Licenseには、モデルは商用利用可能だとはっきり書かれています。大きな音声カタログではなく、英語話者の音声が5種類用意されています。
Orpheus 3B(Canopy Labs)はLlama 3Bをベースにしており、ストリーミング遅延は約200ms、入力もストリーミングすれば約100msとしています。ウェイトはApache 2.0と表記されていますが、ベースがLlamaなので、MetaのLlamaライセンスもあわせて確認してください。主要な2つのモデルは英語で、多言語モデルは研究プレビューです。
Dia 1.6Bはナレーションではなく対話を生成します。話者を[S1]と[S2]でタグ付けし、笑い声などの非言語音も加えられます。Apache 2.0で、英語のみです。参照音声を与えないと実行のたびに違う声になります。デモなら楽しいのですが、製品ではそうもいきません。
CosyVoice 2はAlibabaのFunAudioLLMチームによるApache 2.0のモデルで、入力テキストと出力音声の両方のストリーミングに対応し、開発元によれば遅延は最短150msです。対応言語は中国語とその方言が中心です。
Zonos v0.1(Zyphra、Apache 2.0)は英語、日本語、中国語、フランス語、ドイツ語を話し、6GB以上のGPUメモリが必要です。Maya1(Apache 2.0、30億パラメータ、英語)は表現力のある声の設計向けで、笑う、泣く、ささやくといったタグがあります。
Piperは毛色が違います。Home Assistantを手がけるOpen Home Foundationによる、高速でローカルに動くニューラルTTSエンジンです。保守されているエンジンpiper1-gplはGPL-3.0なので、組み込むとGPLの義務がついてきます。音声ごとにモデルカードと学習データのライセンスがあるため、エンジンだけでなく音声も確認してください。
オープンソースTTSの実力
あえて選ぶ価値がある水準です。寛容なライセンスの上位モデルは、Artificial Analysisで1000から1065の範囲にあります。Amazon Pollyの生成音声(1066)やGoogleのChirp 3 HD(1059)と同じあたりです。
上限はもっと上にあります。Breeze TTS 2は1220、Fish Audio S2 Proは1116ですが、どちらも商用利用はできません。CartesiaのSonic 3.6は1281で、Kokoroより約200ポイント高いスコアです。Eloの尺度では、200ポイントの差は、評価の高いほうのモデルが4回の比較のうち約3回で選ばれることを意味します。
それに、リーダーボードが測っているのは、単体で聞いたときにどちらの音声が好まれるか、という1点だけです。「確認コードはQ7-4XBです」をどう読むか、10分の通話で同じ声を保てるか、200件の通話が同時に始まったときに最初の音声までどれだけかかるかは測りません。1つのスコアではTTSモデルの良し悪しがわからない理由については別の記事に書きました。自社の台本を、自社の言語で、ユーザーが実際に聞く経路で試してください。
セルフホスティングで費用がかさむところ
ウェイトのダウンロードは無料です。実際のユーザーに提供するのは無料ではありません。
電話の音声エージェントでは、モデルは簡単な部分です。ピーク時の同時通話数に見合うGPU、文の途中から再生を始められるストリーミングサーバー、「$1,250.00」や「Dr.」を正しく読むためのテキスト正規化、通話中にノードが落ちたときの切り替えも必要です。これらのモデルのいくつかは、音声全体を生成してから返す研究用コードとして公開されています。それを実際の負荷の下で1秒未満のストリーミングにするのはひとつのエンジニアリングプロジェクトで、モデルカードには書かれていない部分です。
それでも割に合うケースはあります。
- オフライン、デバイス上、または隔離された環境で動かす必要があり、求める品質が小さなモデルで足りる。
- 利用量が多く、安定していて予測できるため、自前のGPUのほうが文字単位の料金より安い。
- 自分用に作っていて、ライセンスは問題にならない。
コストではなくデータ管理が理由なら、オープンウェイトはそもそも必要ないかもしれません。Cartesiaを含むホスト型のプロバイダーは、音声がネットワークの外に出ないオンプレミスやVPCでの導入を提供しています。
Cartesiaを選ぶべきとき
CartesiaのSonicはオープンウェイトではありません。音声エージェント向けに作られた、ホスト型のストリーミング音声合成モデルです。最初の音声まで90ms未満、1つのモデルで44言語、即時の声のクローンに対応しています。無料プランには毎月20,000クレジットが含まれ、1クレジットは1文字なので、支払いの前に自社の台本で試せます。規制の厳しい導入先では、同じモデルをエンタープライズ契約でオンプレミスや隔離環境に導入できます。
私たちのオープンソースの取り組みはEdgeです。状態空間モデルをデバイス上で動かすためのApache 2.0ライブラリです。個人の趣味のプロジェクトで無料かつオフラインの英語音声が必要なら、KokoroかPiperのほうが良い答えです。直接聞かれても同じことを言います。